(釈)甲斐のない物思いなどをするよりは 一杯の濁り酒を飲むべきであるようだ。
☆賢(さか)しみと 物言ふよりは 酒飲みて 酔(ゑ)ひ泣きするし まさりたるらし
「賢(さか)しみ」=自分が賢いと思うこと。
☆なかなかに 人とあらずは 酒壷(さかつぼ)に なりにてしかも 酒に染みなむ
「なかなかに」=中途半端に、なまじっか。
「なりにてしかも」=「しかも」は願望を表す。
(釈)中途半端に人間であるよりも酒壷になってしまいたい。そうすれば、たっぷりと酒に浸ることができるだろう。
以上、大伴旅人の酒の歌から三首。世の中に酒の歌は多いが、記憶の嚢を探ってみれば、手に当たったのはルバイヤート。岩波文庫版オマル・ハイヤーム作『ルバイヤート』(小川亮作訳)よりその「117詩」を引いておこう。
朝の一瞬(ひととき)を紅(くれない)の酒にすごそう。
恥や外聞の醜い殻を石に打とう。
甲斐のないそらだのみからさっさと手を引き、
丈なす髪と琴の上にその手を置こう。
漢詩の中に、ズバリ、酒壷になりたいという詩があったかと思うが、残念ながら思い出せない。

