☆あかねさす 紫野(むらさきの)行き 標野(しめの)行き 野守は見ずや 君が袖振る(額田王)
★紫草(むらさき)の にほへる妹(いも)を 憎くあらば 人妻故に 我れ恋ひめやも(大海人皇子)
有名な万葉集の贈答歌だ。角川ビギナーズ・クラシックス日本の古典『万葉集』から語釈と解説を引く。
#語釈
「紫野」紫草を栽培する野。根から染料を採取。
「標野」一般人立ち入り禁止の野。
「袖を振る」求愛の徴。
#解釈
二首目。「美しい紫草のように匂い立つあなたが憎いのなら、もう人妻なのに何で私が恋をするだろうか」。
大海人皇子は額田王のもと夫。額田王を奪ったのは天智天皇(中大兄皇子)だった。この歌のやり取りは「天智天皇七年(668)5月5日、近江大津の宮から一日の行程の蒲生野(がもうの)で、宮廷をあげて薬狩りが行われた。…おそらく狩りの後のにぎやかな宴席」でのことだったろう、そして額田王、大海人皇子、天智天皇という三人の関係を熟知する人々の前でのスリリングなやり取りだったろう、と言う。
現代風に言えば、社交パーティーで普段は会えない元夫にばったり会った元妻と元夫との歌のやり取り。「標野」とは禁断の場所、「野守」とは今の夫、そして今でも「袖を振る」元夫。力づくで裂かれたとはいえ、今でも燃える恋の炎。それを公衆の面前で歌に託したのだから、危険が一杯だったことだろう。
こう状況を想像すれば、突如歌が生々しい場面を再現してくれる。面白い。
2009年11月04日
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